7回に分けてお伝えしたジャカルタ湾岸のマングローブの森の散策の様子。
これまでアップしてきた写真はこの地域に初めて足を運んだ2年前のものですが、 私はそれまでマングローブの森についての知識がほとんどありませんでした。 以来、この地域に何度か通うようになり、少しずつ学ばせて貰っています。 さて、ここでご紹介した森、実はインドネシア政府が定める自然保護区の中での様子です。 正確にはウジュン・カラワン森林保護区(Kawasan Hutan Lindung Ujung Karawang)といい、 約10,500ヘクタールの広さを有する国有林となっています。 この自然保護区、林業省が自然保護区として設定し、 国営企業である林業公社が管理・運営を任されているのですが、いろいろと課題を抱えているようです。 最も大きな課題がマングローブ林の破壊とエビ養殖池の拡大。 自然保護区でありながら、森が切られてエビが養殖されるとはこれ如何に...? 私も始めは理解できなかったのですが、法律をいろいろと調べていくと自然保護区であってもエビ養殖が可能な理屈がわかってきます。 この自然保護区を管理する林業公社は、株式を100%国が所有する国営企業ですが、 林業によって収益を上げる一方で森林保護政策の一端も担っています。 林業公社は自然保護区に定められた面積のうち、地域の生態系を保全しながらも、 その一部で収益を上げることが認められています。 一般的には林業公社の主な収益は木材生産なのですが、それ以外にも林地を利用したビジネスがあり、 そのひとつが「土地利用権の貸し出し」なのです。 林業公社は生態系が破壊されない程度を見極めながら、 自然保護区の中で生産活動に利用しても良いゾーンを設定し収益に繋げます。 マングローブ林の場合、エビ養殖は大きなビジネスチャンスです。 ただし、林業公社自体がエビ養殖をして収益を上げるのではなく、 土地をエビ養殖業者に貸し出し、その借料から収益を上げる仕組みになっています。 そんな背景があって作られるエビ養殖池。 Google Mapの衛星写真で見ると、この地域がどんな風になっているか一目瞭然です。 細かく区画され、水田のように見える一筆一筆がエビの養殖池です。 さてこのエビ養殖、実際にエビの生産に関わっているのは地元の人達ですが、 エビ養殖の鍵を握っているのは、実はこの人達ではありません。 林業公社から土地を借りるには大きな資本が必要です。 とても地元の零細漁民が借りられる額ではないのです。 これらの土地は1年単位で賃貸契約が成されますが、 それを借りられるのは主にジャカルタなど都市部に住む資本家です。 資本家は林業公社に借料を払って土地を借り、養殖池の造成やエビ養殖に必要なインフラに投資し、稚エビや飼料を用意します。 地元の人達は投資家と契約し、エビの養殖と収穫を請け負うことで仕事を得ています。 どうして自然保護区の中にエビ養殖池が拡がっているのか、ようやく理解できました。 ただ、保全されている森林とエビ養殖池とのバランスは大きな問題となっています。 また、土地利用権の貸し出しというビジネススタイルも見直しが迫られているようです。 それらについては、次回ということで。 エビの収穫をする地元のおじさん。 獲れたエビを頂きました。 売れ残りの小さなエビですが、ブラックタイガーです。 K-5 & Tamron AF18-250mm F3.5-6.3 Di II
by asang
| 2012-06-01 23:46
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