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バドゥイの集落で (#03)
サニップさんのお宅に荷を下ろし、集落を見て回りますが
到着が夕方だったこともあり、あっという間に日が暮れてしまいました。
集落には電気がないので、あたり一面は闇です。
わずかに各家庭から漏れるランプの明かりだけが、そこに集落があることを教えてくれるかのよう。

我々よそ者一行は懐中電灯を持って集落のはずれの小川に向かい、一日の汗を流します。
沐浴から戻るとサニップさんの奥さんが夕餉を用意してくれていました。

夕飯を頂いていると、集落の真ん中にある広場のあたりから竹製の楽器、アンクルンの音色が聞こえてきます。
しかも時間を追うごとに楽器の音が増えていきます。
聞くと、数日後に焼畑での陸稲の収穫が予定されていて、収穫にあわせた儀礼を執り行うための練習をしているとのこと。

居ても立っても居られず、早々に夕食を済ませて広場に向かいます。
40戸ほどの小さな集落の真ん中には15m×15mほどのスペースがあります。
そこに集落の男性陣が集まり、めいめいがアンクルンを抱えて輪になっていました。

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子供達も輪に加わり、回りながらアンクルンを奏でます。

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始めのうちは統率が取れておらず、おもいおもいに音を出していただけのようでしたが、
いつのまにか太鼓の音も加わって、メロディが奏でられるようになりました。

木琴の音に似たアンクルンの調べは、ゆったりとしたリズムから始まって徐々にテンポが上がっていきます。
それぞれのアンクルンの動きはシンプルですが、幾つもの音が重なることによって、かなり複雑なアンサンブルとなります。

他所では聞くことのできないバドゥイのアンクルンの調べ。
目の前で繰り広げられている光景に、私は感動で鳥肌が立ちっぱなしです。

本当はデジカメのビデオ機能で録画したかったのですが、
バドゥイでは静止画の写真は許されていても、ビデオ撮影や録音は禁じられています。
音や肉声、人の動きを記録に残すことは許されないということでしょう。
記録できないのは残念ではありますが、一夜限りの最高の経験と思って演奏を楽しませて頂きました。

我々一行が焚くカメラのフラッシュのほかは、明かりは灯されたランプのみ。

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収穫儀礼の練習とは聞いていましたが、電気のない集落での長い夜を過ごすための、彼らなりの楽しみでもあるのでしょう。
よそ者の我々を楽しませるための演奏というような素振りはまったくなく、
演奏は淡々と、いつ果てるともなく長い間続けられました。
その場に2時間ほど居りましたが、床に就くために頃合いを見計らってサニップさんの家に戻ります。

我々一行は敷かれたゴザの上にめいめいがゴロ寝。
静寂な空間にアンクルンの響きだけが続いています。
本当に贅沢な夜だなぁ、と独り感慨に耽ります。
横になってもしばらくは感動で寝付けませんでした。
この夜の素晴らしい経験は、一生忘れることはないでしょうね。

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by asang | 2010-11-30 21:55 | Livelihood
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